フィリピンにおける現地採用日本人の待遇は?

近年、フィリピンの日系企業では駐在員を現地採用の日本人に置き換えていく動きが加速しています。人材紹介会社である弊社にも、現地採用の日本人採用の依頼が増加しており、フィリピンでの日本人雇用市場の変化を実感しています。そこで、本記事では、フィリピンでの現地採用日本人の給与水準や福利厚生についての動向について解説します。
現地採用日本人の海外就職市場の変化
近年、円安の影響や日本国内の将来不安を背景に、海外転職を希望する日本人が増加しています。実際に弊社では、フィリピンの日系企業から日本人の現地採用に関する採用依頼を80件以上受けており、5年前と比較して1.5倍の増加となり、過去最高の水準に達しています。
この動きの背景には、企業がコスト削減の一環として駐在員から現地採用へのシフトを進めていることがあります。特に、駐在員よりも長期間勤務する現地採用者を積極的に採用し、企業のローカライズを加速させる傾向が強まっています。これに伴い、現地採用の日本人の給与水準も上昇傾向にあります。
さらに、若年層の求職者も増加傾向にあり、5年前に19%だった20代の割合は、現在31%まで上昇しています。
現地採用日本人の給与推移と給与水準
近年の給与推移
上記の背景により、フィリピンにおける現地採用の日本人の給与が上がっており、直近10年で約30%ほど上昇しております。
- 新卒・第二新卒:10年前は6〜8万ペソだったが、現在は8〜10万ペソ程度
- 経験5年の若手:10年前は8〜10万ペソだったが、現在は10〜13万ペソ程度
上記以外の職種であっても、多くの職種で10年前と比較すると30%程度の給与が上昇しております。
給与水準の上昇要因
- 需給ギャップの拡大:
- 企業の求人数が増加する一方で、企業の採用基準に乗る日本人求職者の数が不足しており、給与を引き上げて採用競争に対応する必要が生じている。
- 特に専門スキルを持つ人材の確保が困難となっており、採用コストの増加が見られる。
- 駐在員から現地採用への移行:
- 企業のコスト削減の一環として、駐在員のポジションを現地採用に切り替える動きが加速している。
- これにより、経営幹部やマネージャークラスの現地採用枠が増加し、高給与水準の求人が増えている。
- インフレによる物価上昇:
- フィリピン国内のインフレが進行しており、生活費の上昇に伴い、給与もそれに応じて増加している傾向がある。
フィリピン日本人給与相場
フィリピンペソ | 日本円換算(2.6円) | |||
職種 | 最小 | 最大 | 最小 | 最大 |
営業 | 100,000 | 130,000 | 260,000 | 338,000 |
製造技術者 | 120,000 | 150,000 | 312,000 | 390,000 |
IT | 120,000 | 180,000 | 312,000 | 468,000 |
セールスエンジニア | 120,000 | 170,000 | 312,000 | 442,000 |
コンサルティング | 120,000 | 200,000 | 312,000 | 520,000 |
経営幹部 | 130,000 | 200,000 | 338,000 | 520,000 |
デザイナー | 100,000 | 150,000 | 260,000 | 390,000 |
事務職 | 80,000 | 120,000 | 208,000 | 312,000 |
経理 | 120,000 | 180,000 | 312,000 | 468,000 |
接客 | 60,000 | 100,000 | 156,000 | 260,000 |
人事 | 100,000 | 130,000 | 260,000 | 338,000 |
カスタマーサポート | 60,000 | 100,000 | 156,000 | 260,000 |
2025年2月弊社調査
フィリピン現地採用日本人の福利厚生
フィリピンにおける現地採用日本人の福利厚生は、業種や勤務地によって異なります。製造業と非製造業(サービス業)では少し待遇に差が見られます。
- 非製造業では、企業が従業員の民間医療保険を負担する割合が高い傾向にあります。
- ビザ手続きについては、総じて、製造業・非製造業ともに会社がサポートし、費用を負担していることが一般的です。
- 渡航費負担について、非製造業では日本からの渡航費を負担するケースが3割を超えています。
- 製造業では土曜出社(隔週・半日勤務含む)が全体の4割弱に上っております。

2024年7月弊社調査
まとめ
フィリピンにおける現地採用日本人の雇用環境は、企業の駐在員削減や現地化の流れを背景に大きく変化しています。給与水準は過去10年で約30%上昇し、特に専門職や管理職の需要が高まる中、競争力のある待遇が求められています。また、福利厚生面でも、企業による医療保険やビザ手続きのサポートが一般的になりつつあり、安定した就業環境が整いつつあります。
今後もフィリピンでの日本人採用市場は拡大が見込まれ、求職者にとっては新たなキャリアの選択肢が広がっています。一方で、企業側も優秀な人材確保のため、より魅力的な待遇やキャリアパスの提供が求められるでしょう。フィリピンでのキャリアを検討する方にとって、本記事が有益な情報となれば幸いです。
弊社では、日本人現地採用及びフィリピン人採用支援をしております。採用にお困りの際はお気軽にお声がけ頂ければと思います。