フィリピンで優秀な人材の採用を採用するためには〜給与編〜
フィリピン人材の採用で最も重要なことは「給与設定」です。フィリピンは、給与水準の割に物価が高く、家族を支える責任が重いフィリピン人とっては、給与額が日本以上にシビアな問題となっています。いくら魅力的な仕事内容や福利厚生を用意しても、給与が市場相場に達していなければ、優秀な人材を確保することは難しくなります。
本記事では、フィリピンで優秀な人材を採用するために、日本人管理者が知っておくべき給与に関する3つの重要ポイントを解説します。
1. 給与相場を知ることがスタートライン
フィリピンで人材採用に成功するための第一歩は、職種とポジションごとの給与相場を把握することです。相場より大幅に低い給与を募集活動をしても、魅力的な人材は応募してきません。たとえば、日本ではコンビニアルバイトの時給が1,000円程度であることは広く知られていますが、これを500円で募集しても誰も応募しないのと同じ状態と言えます。
フィリピンでも業種ごと、ポジションごとに給与相場があり、これを大きく下回る条件では採用が難しくなります。以下が日系企業首都圏の給与相場となります(図参照)。
フィリピンの給与相場(日系企業首都圏)
※地方の場合、上記の8−9割の相場になる
また、外資系企業がターゲットにしている優秀な人材を狙う場合、さらに高い給与水準を念頭に置く必要があります。外資企業と日系企業の給与差は拡大傾向であり、特に30代では平均的な給与相場の1.35倍、40代では1.49倍まで拡がります。こうした水準をクリアすることで初めて外資との採用競争に参加できると考える必要があります(図参照)。
さらには、フィリピン企業と日系企業との給与相場も、近年ではほとんど差がなくなってきております。それゆえ、日系企業は、外資のみならず、フィリピンローカル企業とも採用競争をする必要がでてきています(図参照)。
日系外資の給与水準の違い
そして、職位・職種ごとに期待されるスキルや経験値も異なり、それに見合った報酬を提示することが重要です。上記のグラフは全職種の平均となっており、職種によっては、更に大きな差が出ております。たとえば、ITエンジニア・公認会計士やマネージャー職は特に給与が高騰しており、外資の給与水準が日系企業の2〜3倍になることも珍しくありません。こうした相場情報を定期的にアップデートすることが、採用成功のカギとなります。
2. フィリピンでは「月収」が重視される
日本では給与というと主に「年収」を指し、給与交渉やローンの上限額も年収を基準に決定されることが一般的です。しかし、フィリピンでは「月収」が給与の基準となります。その背景には、ローン審査などで必要となる給与証明が、基本的に月収ベースで行われるという事情があります。
そのため、日系企業によくある「月収は控えめだが、ボーナスを多く支給して年収全体を高くする」という給与体系は、フィリピンでは通用しません。たとえ年収を月割りした場合に高額になるとしても、フィリピン人にとっては「月収」が給与の中心的な評価基準であり、オファーの魅力度を判断する大きなポイントです。
加えて、フィリピンでは短期的な収入に対する意識が強く、ボーナスを加えた年収がどれだけ良い条件であっても、月収が低ければ優秀な人材の採用は難しくなります。採用競争で成功するには、魅力的な月収を提示することが欠かせません。
3. 求人広告の給与表示を工夫する
前述の通り、フィリピンでは「年収」よりも「月収」が重視されます。求職者が仕事を探す際も月収を基準にしているため、求人サイトに記載される給与内容も月収が中心となっています(図:実際の求人サイトのイメージ)。そのため、たとえボーナスを含めた年収が高くても、月収が低い場合は求職者の目に留まらず、採用競争で不利になる可能性が高まります。
理想的には、月収そのものを引き上げるのがベストですが、社内の給与テーブルや方針の都合で難しいことも多いと思われます。その場合、有効な対策として、賞与を13ヶ月ペイのみに抑え、残りを月収に振り分けることで月収額を実質的に高く見せる方法があります。このアプローチは日本人にとっては馴染みが薄いかもしれませんが、フィリピンでは「年収」を基準に考える人は少なく、月収の多寡が最も重要視されます。そのため、多くの求職者は自分の年収がどれほどかを正確に把握していない場合さえあります。
実際に弊社でも、過去に社員が転職を検討する際、「月収が上がる」という理由で「年収が下がる」条件でも転職を選ぶケースが見られました。その際、年収が下がることを説明したことで、結果的に転職を思いとどまった事例もあります。このように、求人の給与設定において月収を強調することが、求職者の目に留まり、採用を成功させる鍵となります。
まとめ
フィリピンでの人材採用の成否は、給与設定が大きなカギを握っています。市場相場に合った給与を提示し、「年収」ではなく「月収」を重視するフィリピン特有の文化を理解することが必要です。さらに、求人情報では月収を目立たせる工夫を取り入れることで、求職者の注目を集めやすくなります。
日本と異なる感覚を踏まえ、柔軟な戦略を採用することで、フィリピンでの採用競争を勝ち抜き、優秀な人材を確保しましょう。