マネジメントの難易度を下げるルール設定のあり方
商習慣の異なるフィリピン人のマネジメントは日本人のマネジメントとは異なります。当然日本のように『性善説』や『阿吽の呼吸』は通じません。それゆえ、価値観の異なるフィリピン人従業員のマネジメントには基準となるルール設定が不可欠となります。そこで、本校では、マネジメント視点でのルールのあり方について記載しております。
共通ルールの重要性
皆さん、フィリピンでマネジメントするにあたり、以下のような状況に直面したことはありませんでしょうか。
・始業後に朝食を食べ始める
・数分の遅刻が多い
・業務中に私用のSNSをしている
・11時のアポなのに会社に出社せずに自宅から直行する
日本人にとっては違和感のある行動であっても、価値観が異なるフィリピン人にとっては特段問題がないということが多いです。そのような状況下で、日本人の管理者が注意をしても彼らはなぜ注意されているかが分からず、行動が直らず、人間関係だけがこじれるということがよくあります。
注意という行為は、指摘をする側も指摘を受ける側にとってもストレスでしかありません。では、どうすれば、あるべき姿でフィリピン人は動いてくれるのでしょうか。
それは、『共通ルールの設定』となります。
例えば、以下のようなルール設定が必要となります。
・準備(着替え・化粧・朝食など)は始業時間の8時までに終わらせる。終わっていない場合は遅刻扱いとする。
・1分の遅刻でも遅刻扱いとする。遅刻を月に4回以上すると警告書を送る。
ルールを効果的に機能させるための3点セット(解説編)
そして、ルールを効果的に機能させるためには、次の3点セットが必要となります。
- ルールの設定
- ルールの浸透
- ルールの運用
1. ルールの設定
- シンプルで明確なルールを設計することが大切です。解釈に差が生じるような複雑なルールは、現場で機能しません。
- 道路交通法で例えると、「赤信号は止まる」というルールは非常にシンプルで、誰にでも理解しやすく、解釈の違いが生じません。
2. ルールの浸透
- どんなに良いルールを設計しても、従業員が知らなければ意味がありません。ルールを浸透させるための仕組みが必要です。
- 例えば、「赤信号は止まる」というルールは、親からの教育や自動車免許取得時の学習を通じて、全てのドライバーに浸透しています。
3. ルールの運用
- ルールを守る動機付けがなければ、ルールは形骸化してしまいます。ルールを実効性のあるものにするためには、インセンティブや罰則を設けることが効果的です。
- 「赤信号は止まる」の場合、警察の取り締まりや罰金が、そのルールを守らせるための仕組みとなっています。
上記がルールを効果的に機能させるための3点セットとなります。具体的な事例を当てはめていきます。
ルールを効果的に機能させるための3点セット(実践編)
従業員が8時の始業後に朝食を取るのを止めさせたい場合、次のように3点セットを適用します。
1. ルール設定
就業規則に「仕事の準備(化粧・着替え・朝食など)は始業時間の8時までに完了させる。」と明記します。
2. 浸透への取り組み
ルールを周知させるための仕組みを構築します。例えば、以下のような方法があります。
・試用期間の通過条件としてルール遵守を明記す
・評価制度にルール遵守を組み込み、給与査定に反映させる
・ルールの理解度をテストで確認する
3. 運用への取り組み
ルール違反に対する罰則を明確に設定します。次のような段階的な対応が考えられます。
・1回目の違反:口頭での警告
・2回目の違反:書面での警告
・3回目の違反:出勤停止3日間
・4回目の違反:解雇
※罰則について弁護士・法律などを確認すること
まとめ
このようにルールが明確であれば、自社のHRや管理部門がルールに基づいて事務的に運用を進めることができます。日本人管理者が都度注意をしなくても、ルールが従業員をマネジメントしていく形となります。
今回の例は、遅刻としましたが、その他設定すべきルールは多数あります。以下ルール設定のポイントと事例について添付しております。