タイで採用活動を行う日系企業の人事担当者・採用責任者の方から、「良い候補者にオファーを出したのに辞退されてしまう」というお悩みをよく伺います。せっかく時間とコストをかけて選考を進めても、最後のオファー段階で取りこぼしてしまっては意味がありません。
実は、タイの採用市場におけるオファー承諾率の平均は70%と言われています。もし御社の承諾率がこれを下回っているなら、候補者の質の問題ではなく、オファープロセスそのものに改善の余地があるかもしれません。
この記事では、タイの日系企業がオファー承諾率を上げるために押さえるべき4つのポイント(事前交渉・提示額・スピード・回答期限)を、具体的な数字とともに解説します。
この記事は、RCXのYouTube動画の内容をもとに再構成したものです。
タイ採用における「オファー」とは?承諾率の平均は70%
ここで言うオファーとは、企業が候補者に対して「この条件で入社しませんか」と正式に入社を打診することです。企業によっては「労働条件通知」「内定通知」「採用条件通知」などと呼ばれますが、タイではオファーという表現が最も一般的です。
冒頭でお伝えした通り、タイの採用市場ではオファー承諾率の平均は70%です。人材採用は、良い方が見つかっても入社していただかない限り意味がありません。だからこそ、最後のオファープロセスで取りこぼさないことが極めて重要なのです。
本記事で解説する4つのポイントは以下の通りです。
| ポイント | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 1. 事前交渉 | 最終面接・オファー面談で希望条件を確認 | オファー前に必ず実施 |
| 2. 提示額 | 現職給与を上回る額を提示 | 現職+10〜20% |
| 3. スピード | 最終面接後すぐにオファーを出す | 当日中、遅くとも翌日 |
| 4. 回答期限 | 期限を必ず設定する | 1週間、最長2週間 |
ポイント1:オファー前の「事前交渉」で承諾しやすい条件を設計する
事前交渉と聞くと難しく感じるかもしれませんが、やることはシンプルです。最終面接やオファー面談の場で候補者の希望条件をしっかり聞いておく、これだけです。これを怠ると、希望給与や勤務条件のすり合わせをしないままオファーを出すことになり、運任せのオファーになってしまいます。
逆に事前にしっかりヒアリングしておけば、候補者が承諾しやすいオファーを狙って作ることができます。また、希望給与が高すぎる、条件が折り合わないといった候補者へのオファーを事前に回避することも可能です。
事前交渉で最低限確認すべき4項目
| 確認項目 | 確認内容とポイント |
|---|---|
| ①現職給与と希望給与 | 月収と年収の両方で確認。タイは月収ベースの文化だが、賞与の月数で年収が大きく変わる。「いくらなら承諾いただけますか」とストレートに聞く |
| ②福利厚生のすり合わせ | 自社の福利厚生を説明し、候補者が求めるものを用意できない場合は給与や別の形で補えるか検討する。在宅勤務の可否は特にずれが生じやすい |
| ③退職にかかる日数と入社可能日 | タイでは退職通知は1ヶ月前が一般的。入社日をいつに設定できるか確認する |
| ④他社の選考状況 | 何社の選考が進んでいるか、すでにオファーが出ているか。比較対象と勝負できるか、いつまでにオファーを出すべきか逆算できる |
特に②の福利厚生は、給与と並んで候補者が重視するポイントです。自社の福利厚生パッケージを整理しておくと、事前交渉がスムーズになります。


事前交渉は、必ずオファー面談か最終面接で実施してください。そして誤解を防ぐため、オファーレターのドラフトなど書面に起こした上で確認するのが確実です。お金や条件の話になると、候補者の本心がここで見えてきます。条件にやたらこだわる、相性が合わないと感じた場合は、オファーレターを出す前の段階なのでオファーを出さないという最終判断も可能です。
ポイント2:オファー提示額は「現職給与+10〜20%」が承諾を得やすい水準
オファー提示額が現職給与と同じ、または下回っていると、承諾率は一気に下がります。同じ仕事をするなら給与は上がる方がいい、というのは万国共通ですが、タイにはさらに踏み込んだ背景があります。
タイでは試用期間が最大119日あります。日本では試用期間中の解雇はまれですが、タイでは試用期間中の解雇はごく一般的に起こることです。そのため、同額程度の給与では「そのリスクを背負ってまで転職しない」というのがタイ人候補者の本音なのです。
では、どれくらい上乗せすればよいのか。目安は現職給与+10〜20%です。高いと感じるかもしれませんが、理由があります。タイでは現職に留まっても毎年5%程度は昇給するのが一般的です。つまり転職して5%アップ程度では、わざわざ動く意味がないのです。
| 提示額の水準 | 候補者の受け止め | 承諾率への影響 |
|---|---|---|
| 現職と同額・下回る | 試用期間のリスクを負う意味がない | 大幅に低下 |
| 現職+5%程度 | 残っても来年5%上がるので動く意味が薄い | 低い |
| 現職+10〜20% | 現職に残るより明確なメリットを感じる | 承諾を得やすい |
タイの給与相場や日系・外資・ローカル企業の水準比較については、別記事で詳しく解説しています。


ポイント3:オファーは当日中、遅くとも翌日に出す
面接を受けている候補者は、御社一社だけを受けているわけではありません。優秀な候補者ほど複数社を同時に受けています。御社のオファープロセスに時間がかかっている間に、他社のオファーで決まってしまうことは日常茶飯事です。
結論からお伝えすると、良い候補者なら当日中、遅くとも翌日にオファーを出すべきです。タイトに感じるかもしれませんが、優秀な人材を採るにはこのスピード感が必須です。
よくある失敗パターンがこちらです。最終面接で良い候補者に出会った。しかし本社の承認に1週間、オファーレター作成にさらに3日。気づけば2週間が経過していた──。この間に良い候補者は他社からオファーをもらっています。このスピード感では、良い候補者の採用はほぼ不可能です。
ではどうすればスピードを実現できるのか。答えはシンプルです。
- オファー面談の前にオファーレターのドラフトを作成しておく
- 面談で聞いた事前交渉の調整事項を反映させて送るだけの状態にしておく
- 本社承認が必要な場合はあらかじめ想定条件で内諾を得ておく
こうしておけば、最終面接の当日にオファーを出すことも十分に可能です。事前交渉とドラフト準備こそが、スピードを生む鍵なのです。なお、選考スピードはオファー段階だけでなく書類選考の段階から重要です。


ポイント4:回答期限は1週間、最長でも2週間に設定する
回答期限を設定しないままオファーを出している会社が時々ありますが、これは絶対に避けるべきです。候補者の立場から見ると、期限のないオファーは「他社の結果を見てからゆっくり判断しよう」となり、結果として御社のオファーは他社選考の比較材料として使われるだけになってしまいます。
| 回答期限の設定 | 目安・判断 |
|---|---|
| 標準の期限 | 1週間 |
| 家族との相談などが必要な場合 | 最長2週間まで |
| 2週間でも足りないと繰り返す場合 | 他社選考を優先しており、御社が第一志望でない可能性が高い。長く待っても良い結果につながりにくい |
もう1つ知っておいていただきたいのは、回答に時間がかかりすぎる候補者は要注意ということです。「2週間でも足りない、もう少し待ってほしい」と繰り返される場合、他社を優先しており御社が第一志望ではない可能性が高いです。長く待っても良い結果には繋がりにくいのが実態です。
まとめ:4つのポイントを押さえれば承諾率は確実に上がる
タイの日系企業がオファー承諾率を上げるためのポイントを整理します。特に承諾率が平均の70%を切っている企業であれば、これらを実践するだけで70%までは回復できるはずです。
- 事前交渉を必ず実施する:最終面接・オファー面談で「現職給与と希望給与(月収・年収)」「福利厚生・在宅勤務のすり合わせ」「入社可能日」「他社の選考状況」の4点を確認する
- 提示額は現職給与+10〜20%:タイは試用期間中の解雇が一般的なため、同額程度では転職リスクに見合わない。毎年5%程度の昇給がある前提で明確なメリットを示す
- オファーは当日中、遅くとも翌日:ドラフトを事前準備し、面談後すぐ送れる状態にしておく。本社承認で2週間かけていては優秀な候補者は採れない
- 回答期限は1週間、最長2週間:期限のないオファーは他社の比較材料にされる。回答を引き延ばす候補者は第一志望でない可能性が高い
オファーは採用プロセスの最終段階ですが、その成否は選考全体の設計に左右されます。求人票作成から面接、オファーまでの全体像は、こちらの記事でご確認ください。


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